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“近自然”とは何か

更新日:2020年9月25日

近自然河川工法の定義

当研究所の名前にも入っている「近自然(きんしぜん)」という言葉、聞き慣れない方も多いかもしれません。これは「近自然工法」という自然再生の考え方から取っています。
近自然工法は、1980年頃のスイス・ドイツで生まれた生態系を復元する概念で、これを河川にあてはめたものが近自然河川工法です。そのコンセプトは下記のように定義されています。

近自然河川工法のコンセプト
「近自然河川工法とは、河川を上流から下流にかけて流域全体の自然の営みや景観の中でとらえ、それらをどのように発展させていくか」という川全体に対する工事や維持管理の土木工法の総称である。
出典:近自然河川工法の研究(クリスチャン・ゲルディ、福留脩文 著)

基本的な考え方

川の物理環境や生態系には、出水などの攪乱である程度の破壊が起きても、元の状態に戻ろうとする復元力があります。この攪乱と復元の繰り返しは、川の生き物の多様性を維持する上で欠かせないものです。このような自然の営みによって良好な河川環境が維持されているエリアは当然ながら守る必要があります。
しかし、自然の復元力を超える人為的な改変などが起きると、そこから元の状態に戻るには多くの時間を要します。そうしたときに、「川が自らの営力で回復していけるところまで人が手助けをしよう」というのが近自然河川工法の基本的な考え方です。

日本で環境に配慮した川づくりとしては「多自然川づくり(当初は多自然型川づくり)」がありますが、これを始めるときの参考にされたものが実は近自然河川工法なのです。
*多自然川づくりの詳細は国土交通省のホームページをご覧下さい。

この近自然河川工法を日本に紹介し、その普及と発展のために尽力した人が、私の師匠である故福留脩文氏です。同氏は、自然の川の動態を観察したり、日本の伝統的な河川工法を応用したりしながら、日本の川に合わせた環境再生の技術開発に取り組みました。私の川づくりは、同氏が研究・開発した技術や考え方がベースになっています。
当ホームページでは、上記の近自然河川工法による川づくりを「近自然の川づくり」と呼んでいます。

天竜川

天竜川:ダム下流の失われた瀬を近自然工法で再生した現場
→詳細は事例case03をご覧下さい